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2026年5月24日

赤色立体地図で岩石を識別できるか?

昨今、赤色立体地図を利用して古墳や城郭を発見する取り組みが活発です。

従来の等高線とは違い、航空レーザ測量による1m単位あるいはそれ未満での微細な地形の流れを確認できます。

古墳や城郭は大幅な地形改変を伴うため、自然地形に対して不自然な溝・段・平坦面などが残ります。面白いのは、人間の視野では現地で気づきにくい俯瞰的な地形改変が赤色立体地図だと浮かび上がるという点です。

それでは岩石の場合はどうなるでしょうか。

1m単位の地形の流れであれば、それより高さのある岩石の起伏が立体化されうるのではないかという狙いです。

これにより岩石信仰調査や自然石文化調査に援用できるのではないかという見通しを立てて、今回、いくつかの事例を皆さんと見ていきたいと思います。


赤色立体地図のデータについて

ウェブサイト「全国Q地図」では法令上公開・活用が可能なさまざまな地図情報がまとめられており、赤色立体地図も全国版・地域版・都道府県別で使用可能なものが網羅されています。

下のページが特にわかりやすいです。

全国の赤色立体地図、CS立体図が閲覧できます! | 全国Q地図


今回は、この内の「基盤地図情報(標高)1mメッシュ(DEM1A)【Q地図】」の赤色立体地図を使ってみます。

私が過去に訪れた岩石祭祀事例の中で、地形的特徴をもつと思われるものをピックアップして確認してみました。

確認してみてわかったこととして、すべての場所に赤色立体地図があるわけではないのが注意点です。

たとえば、賀茂神社の神籠石(群馬県桐生市)金鑚神社の鏡岩(埼玉県児玉郡神川町)白山神社の巨大岩塊(福井県勝山市)金丸八幡神社の列石(徳島県三好郡東みよし町)などはその場所一帯が赤色化されていなかったため確認不能でした(公開されている範囲で)。

悉皆調査することはまだできない前提で、その他の場所をいくつか見てみましょう。

グレー表示の部分が赤色立体可能エリア(DEM1Aの場合)

なお、地図の引用・転載はこちらにあるとおり、全国Q地図・地理院タイルのクレジットが地図上に写っていれば、それをそのまま出典表示に変えることができます。


Case 1. 建鉾山


山腹から山頂にかけて数十m規模の一大巨岩です。
これがどのように表示されるかで赤色立体図の基本スペックが見えてくると思います。


比較できるように、左に従来の等高線地図、右に赤色立体地図を画面分割して掲載しました。

一目見て、等高線地図では緩やかな楕円形に見える山容も、実際には緩急のついた起伏のある山中地形であることがわかります。

そして一大巨岩。山頂から北の谷間に向かって筋状に隆起しているのがそれです。特に白光りと鮮明な赤色表示をなしているので、周辺地形と巨岩とを判別できます。

建鉾山の例では、赤色立体地図で岩石地形を確認できるという結果になりました。


Case 2. 榛名神社

榛名神社の御姿岩(群馬県高崎市)ならどうでしょうか。

高さ50m弱といわれる立岩です。想定としては、明らかな地形起伏として描かれるのではないでしょうか。


作図ツールを使って黄緑色の円で囲んだところが、御姿岩のある場所です。

社地を設ける際に整地した地形は明確に浮き出ていますが、御姿岩は…思ったより…目立っていません。御姿岩は立岩状なので上から見ると「点」表示になると考えられますが、50mという高低差が図化されていない気がします。

建鉾山は山と同体化した岩盤地形だから描かれて、御姿岩は地表から浮いた構造物的な扱いとして図化されないのか、レーザ識別の「癖」を知る必要があります。

榛名神社の例では、赤色立体地図で岩石地形を確認するのは難しいという結果になりました。


Case 3. 星ヶ見岩

岐阜県中津川市の巨石の宝庫として知られる星ヶ見公園はどのように見えるでしょうか。

こちらは探訪記事をまだ公開していないことに気づいたので、下に参考写真を掲載します。こんな山です。



星ヶ見公園の岩がムキムキしている様子がよく図化されています。これらの岩々は地形として認識されている様子で、地形認識だとこの規模の巨岩を赤色立体地図で確認するのは容易です。


Case 4.  渭伊神社境内遺跡

大多数の方が「天白磐座遺跡」と通称しつづける、渭伊神社境内遺跡(静岡県浜松市)です。

(棘のある言い方ですみませんが、学術的にここは譲れません)


ポツポツと岩石らしき隆起は見えますが…さて、これをもって岩石群の発見は容易と言えるでしょうか?

今回は事前にここに岩石群の遺跡があることがわかっていて、事後的に赤色立体地図を見にいっているから「まあ、あるよね」くらいの感想ですみます。しかし、本来の趣旨である未発見の岩石群を地図上で探そうという用途で考えるなら、これではやや厳しいでしょう。実際に現地に行ってみないとそれが岩石かどうかはわからないと思います。

人間の視覚に訴えるA岩、B岩、C岩のトライアングル景観が、赤色立体地図上ではなかったことにされるのもいろんな意味で興味深いです。

岩Aは高さ7m強あり図化されていると思いますが、高さ7mない道幅の整地跡のほうが鮮明に写るというのが赤色立体地図の特徴のようです。


Case 5. 東光寺山出世不動明王

近江富士に北接する東光寺山の出世不動明王(滋賀県野洲市)は、谷間にこんもりと隆起する岩塊でありこれがどのように図化されているか気になります。


右下の小さい丸のほうが、出世不動明王の岩塊です。

これはくっきり存在しています。当初の予想に応える結果であり、このように地形の隆起として認識されれば強いです。

岩石と関係ないですが、それ以上に予想外だったのは左上に囲んだ部分です。

ここは妙光寺山の頂上です。妙光寺山城という中世の山城が確認されていますが、前方後円形に見えなくもない。主軸の長さは100mに達しようかという大規模なもので、前方部と後円部のバランスを考え合わせると古墳時代後期の前方後円墳の特徴にも見えます。

妙光寺山の山麓・山腹には群集墳が存在しますが、山頂の前方後円墳は文化財総覧GISを見る限り報告されていません。山城のほか、山名のとおり山寺の整地地形の可能性もありますが、念のため今の流行に乗っかり、前方後円墳候補としてここで報告しておきます。


Case6 . 梅ヶ畑銅鐸埋納地

梅ヶ畑遺跡(京都市)と言えば、京都市唯一の銅鐸出土地で岩石信仰との関係も取り沙汰される重要遺跡です。


土地開発で完全に地形改変されているのがよくわかります。埋納地にあったという自然石群も今はなく、山頂尾根ですら本来の自然地形はまったく残っていないという事実を知るのにも、赤色立体地図を活用できることがわかる事例です。
ちなみに緑丸のすぐ左にポツポツ浮かんでいるのは御堂ヶ池群集墳です。


Case 7. 日室ヶ嶽

日室ヶ嶽(京都府福知山市)の東斜面は今も禁足地で、内部の様子は不明です。

このように、立ち入ることができない禁足地内の岩石群の存在を赤色立体地図で把握することは、本来の趣旨に適う使い方でしょう。


山頂から東にかけての斜面に、相当数のポツポツとした隆起が存在していることが窺えます。これまで見てきた事例を踏まえれば、これらがすべて岩石である可能性は高いです。

日室ヶ嶽の東斜面がなぜ禁足地であるか、そして、日室ヶ嶽の「磐座」とは山頂ではなく東斜面を指すのではないかなどの示唆を与えてくれます。

緑色の丸は、天岩戸神社の御座石があるはずの場所ですが、川の中の岩石は地形ではなく構造物としてはじかれてしまう模様です。


Case 8. 御社尾とハッチョウサン

御社尾(奈良県奈良市)は、都祁山口神社の裏の谷頭に位置し、二つの尾根が合流する特異な立地で知られます。


御社尾の岩塊(上の緑丸)は、なんとなく周辺より尖っているかなくらいの印象で岩石地形としては鮮明ではありません。小川光三氏が述べるような前方後円形も地形上では認められません。

下の緑丸はハッチョウサン(八王山)と呼ばれる場所で禁足地とみなされています。ここに列石らしきものがあると同・小川氏が書き残していますが地図上ではその列石具合が確認できず残念。こういう時に活躍できるとよかったのですが。


Case 9. ゴトビキ岩

ここで巨石の代表格・ゴトビキ岩(和歌山県新宮市)に登場願いましょう。


天磐盾に比定される神倉山の岩肌は、山塊の周縁にわたって明瞭に図化されていますが、それに比するとゴトビキ岩は緑丸の中で目立ちません。

高さ10mを超すと言われる巨岩ですが、存在していないような結果です。構造物扱いで除外されてしまったパターンでしょうか。このように岩石の「当たり」判定は微妙な位置づけにあるようです。


Case 10. 粟島神社の巨石

粟島神社の巨石(愛媛県大洲市)は、段丘上の高さ約4mの岩塊で人工説も出たことのある「ドルメン巨石遺跡」。


社地として整えられた平坦面に存在する巨石なので、そのギャップがどのように地図に表れるかの結果がこちらです。

緑丸の中にポツッと岩石の盛り上がりが見えます。見えますが、これは渭伊神社境内遺跡と同様に事前に知っているから事後的に識別できるだけで、事前情報なしでどれが岩石だと問われれば至難です。

高さ4mの「巨石」と形容される岩石で赤色立体地図上ではこの存在感ですから、岩石の識別に用いるには難しいという結論にならざるをえません。


Case 11. 猪群山

最後に猪群山の「環状列石」(大分県豊後高田市)を上空から眺めてみましょう。


ポツポツと岩の群れは視認できますが、それよりも視覚的に引っ張るのは山頂を取り囲む人為的な溝。

これは明治時代に山火事に備えて作られた防火施設です。やはりこういう人為的な地形改変に赤色立体地図は強く、また、視覚的にもこの防火壁が「環状列石」を誤認させる要因であることは岩石群の分布と照らし合わせれば瞭然です。


結論

いくつかの例を一緒に見てきました。

結論ですが、現状、岩石を見つけるのには適したツールとは言えません。

赤色立体地図では時に自然地形の岩盤として、時に構造物としての岩石として自動識別していることにより、一貫した調査に用いることができなさそうです。

しかし、その岩石が存在する場所の地面が、整地されているか自然地形のままかを判断する際の参考にはなります。

岩石信仰というのは自然風景と人の歴史の狭間の存在であり、単なる自然石として扱われることもあれば、真偽不明の人工物として持ち上げられることもありました。これまでは主に研究者の主観の問題領域でしたが、地図情報においても狭間・周縁の存在になりやすいのだと感じた次第です。


2026年5月10日

【2026年現存版】磐座・巨石サイトリンク集

「しゃこちゃんのお部屋」が閉鎖されていました。


しゃこちゃんのお部屋とは何か?

青森県つがる市が呼びかけた縄文ファンの部室「しゃこちゃんの部屋(仮)」ではありません。

【青森県つがる市】縄文好き求む!縄文ファンの部室「しゃこちゃんの部屋(仮)」と遊べる縄文プログラムを開発してくれる仲間を募集します!(青森県つがる市) | 地域とつながるプラットフォーム スマウト (SMOUT)

 

これより前の1990年代から存在する老舗巨石サイトです。


私が初めて出会った思い出の巨石サイトとして過去記事でも紹介しました。

磐座で有名な場所はどこですか?~磐座巨石本から決定版を決める~

 

ここ数年は更新されていなかったと記憶していますが、個人サイトはアーカイブとしても残らず無念です。


現在はAI最適化のAIOの時代ともいわれますが、ネットの表示上位を見ても広告スポンサーとドメインの資本力の嵐で、いわゆる磐座・巨石分野の上位ラインナップを見ても質的には正直疑問です。

このような現状はインターネットユーザーの総意ではなかったはずですが、内容が充実していても個人サイトは軒並み敗北です。


こんなサイトもありましたがweb上ではすっかり痕跡も辿れませんね

インターネットはこんなもんじゃなかったよ、ということで、今回は個人サイト特集です。

近著で「2001年からホームページを始めて、インターネット上の情報発信を続けながら各種プラットフォームの栄枯盛衰を目の当たりにしてきた」と書きました、不詳私めが磐座・巨石分野の現存サイトを選定いたしました。

現代のプラットフォーマ―たちから作為的に存在感を消されているだけで、まだ良質なサイトは存在します。

古き良き「リンク集」としてどうぞご活用ください。


神奈備にようこそ

この手の老舗サイトの中でも、2000年頃にはすでに王者の風格でした。掲示板が梁山泊の如き様相。サイト更新は停止状態ですが、現行掲示板は何とか生きています。正確には神社総合サイトですが「磐座いこら」のコーナーに磐座がまとまっています。

http://kamnavi.web.fc2.com/


閼伽出甕

「アカデミカ」です。歴史系総合リンク集でした。インターネット黎明期にお世話になった方も多いのではないでしょうか。リンク切れまくっていますが検索画面が生きていて、「磐座」「巨石」で検索すると1996~2000年頃の懐かしページ名がぽろぽろ見つかります。これこそが老舗サイトです。

https://www2m.biglobe.ne.jp/~Accord/AKA/index.htm


全国巨石磐座探訪記

独自の視座に立ちながら定期的に更新されています。さぞ一家言ある方とお見受けしています。ドメインパワーも強く、現在の磐座・巨石系個人サイトの代表格に数えて差し支えないでしょう。

https://megalithtrek.web.fc2.com/


巨石巡礼

一定の更新ペースを守りながら現役稼働しています。モノクロ岩石写真の魅力。『日本のパワースポット案内巨石巡礼50』著者の岡田謙二氏のサイト。

http://home.s01.itscom.net/sahara/stone/


磐座・巨石(旧・求道者)

更新は終了されたようですが、アーカイブを残していただいています。「求道者」と言えばかつての巨石サイト代表格の一角であり勝手ながら「戦友」でもありました。

https://hatazoku.d.dooo.jp/sub0.htm


泰山の古代遺跡探訪記

日本語版をhtml→pdfでアーカイブ化していただいています。巨石サイトと呼ぶよりも、もっと大きな括りとしての超古代系サイトの重鎮でした。日本ピラミッドや神代文字もすっかり下火になった感があります。

https://www.gainendesign.com/taizan/


星と太陽の会のブログ

2016年に解散した岡山県の郷土団体ブログですが、新プロジェクト「岡山の磐座位置経路探索記録」が稼働しているのをどれだけの同好の士がご存じでしょうか? 駐車位置のマップコードをマップ化しているとはなんと有難い心遣いなのでしょう。

https://kibiiwakura.blog.jp/


Litle Mad Land

更新は終了されていますが、「巨石の森」は瀬戸内地域の巨石ソースとして豊富な知見を得られます。Googleマイマップ「西日本巨石スポット」も有用。

https://www.gd.il24.net/~shamon/


「巨石信仰」の検索表

古くから検索にかかり存じていました。中根洋治氏の『愛知発巨石信仰』の大部分転載が認められますが、オリジナル部分との区別は比較的明瞭。中根氏著書を未所持の方で愛知県の磐座・巨石を知りたい方は参考大でしょう。

https://www.hm.aitai.ne.jp/~kuensan-2/kyosekikensaku.htm


古志郡 三宅神社 伝承と祭神の研究

越後国延喜式内社・三宅神社を出発点に「磐座=穴」説の立場に立つ。新潟の知られざる岩石信仰を知るならここしかないと思っています。拙サイト掲示板晩期に交流させていただきました。HP&ブログ更新が途絶えてしまいましたが待ち望んでいます。

https://koshi-miyake.hatenablog.com/


from八ヶ岳原人

諏訪の"たしかな"岩石信仰をたくさんこちらのサイトから教えていただきました。諏訪七石に関する記事を捲るだけでも精緻冷静な調査に拠ることをご理解いただけます。

https://yatsu-genjin.jp/


@丸森の巨石伝説!

宮城県旧伊具郡(丸森町・角田市)の巨石サイト。古くから存するサイトで相互リンク先でもありましたが、運営元はなんとお寺(曹洞宗金龍山瑞雲寺)ということを知り驚きました。

https://zuiunzi.net/igu/


いぼとり神様・仏様の全国リスト

「いぼ石」(疣石)情報No.1と私が思うサイト。皮膚科の医院さんのホームページだったようです。効能に関する記述の保証は持てません…。

https://hiramatu-hifuka.com/iboibo/ibozen1.html


日本の力石研究

「力石」研究の第一人者・高島愼助氏のサイト。現在も精力的に運営されています。奇しくもも高島氏と同じ四日市市在住ですが、これまで接点のないままーー。

https://www.za.ztv.ne.jp/takashim/


平津豊のイワクラ研究サイト

イワクラ学会が解散して現在は日本天文考古学会理事の平津豊氏のサイト。イラクラ学会の会報アーカイブ事業にも取り組まれています。イワクラペディアの拡充に期待。個人的には、「岩石遺構」「岩石信仰」の名称採用をいただいたことに感謝します。

https://www.iwakura.website/


イワクラ(磐座)ウオッチング

イワクラ学会理事だった江頭務氏のサイト。1にも2にも「巨石のある祭祀遺跡地名表」の仕事が有効活用されるべきです。学会解散により、早期にサイト内容のアーカイブ化が各人推奨されます。

https://yamauo1945.sakura.ne.jp/iwakura.html


石と在る

イワクラ学会理事だった高木寛治氏が2005~2008年のみ更新されていたブログ。石の哲学とはこのことです。全貌は高木氏が上梓された書籍を参照(当HPの「カタログ」で紹介)。

http://makabekt.cocolog-nifty.com/makabekt/


庭に磐座をつくる

『磐座百選』著者の池田清隆氏の晩年コラム。逝去された後も出版社ページに保存されています。ご自宅に据えられた「磐座」の歴史記録をたどれるのは最早ここだけでは?

http://www.demadosha.co.jp/Column-Ikeda.html


巨石・滝・地形めぐりの記録とメモ

磐座・巨石分野のネット情報として唯一と言って良い、地学に基づいた岩石の構築原因が解説されています。東日本の代表的な磐座・巨石の多くが自然成因で説明可能であることがわかります。西日本版も欲しかったと高望みを記しておきます。

https://chibataki.moo.jp/


磐座MAP

本庄範光氏作成のGoogleマイマップ。地方別に磐座MAPを用意されていますが、数多ある磐座・巨石マップでは最大級の収録数です。ブログはスピリチュアルしていますが、このマップ作成に注いだ情熱に対しては脱帽せざるを得ません。ご存じの方は皆さん陰ながら参照してますよね・・・?

https://ameblo.jp/norimitsuhonjo/entry-12242379280.html


ストーンサークル

㈱石文社 石文化研究所運営の石情報サイト。『月刊石材』発行元ですので石材系の情報が多めですが、広く岩石に関する文化を情報化しようという試みが窺われます。現在、岩石と文化の関係を結ぶ活発的な団体は少ないので貴重。

https://stone-c.net/


神秘と感動の絶景を探し歩いて

磐座・巨石ブログ界の最大手はこちら。運営者の方も知る人ぞ知るこの道の大家ですが、好んで公表されていないようですので控えます。いつまでも斯界の先達としてご教示賜りたく思います。

http://sazanami217.blog.fc2.com/


奇岩巨石磐座ニュース

X界における総合ポータル。変わらぬ最新情報発信&シェアに感謝です。私はXを撤退したので、毎回いいね押すのを遠慮して数か月に1回押すようにしています。


WABI CHANNEL

YouTubeに有益情報はないのかということで推したいチャンネルがこちら。盆栽・水石界の重鎮である森前誠二氏が主宰。ご本人解説の水石文化の動画は有料級情報。再生リスト「水石」からどうぞ。

https://www.youtube.com/@WABICHANNEL-kf5xf


現代水石

水石系サイトからもう一つ。水石ブームの歴史的経緯から、「現代」の水石のありかたを模索するところに特徴があります。さらなる継続的更新を期待しています。

https://suisekij.jpn.org/


思い出したり新たに見つけたりしたら追加します。

2026年5月3日

【歴史研究者向け】歴史学でカイ二乗検定・フィッシャー正確確率検定を用いる手順(フリー統計ソフト「EZR」の場合)

歴史研究者が学ぶべき最も重要な統計手法は「カイ二乗検定」といわれます。

カイ二乗検定などの意義については、過去の記事で紹介しました。

統計学まなびはじめ(『人文学のための計量分析入門』『基礎から学ぶ統計学』)


かつては手計算するしかなかった統計検定も、現代ではオンライン上で必要なデータを入れれば自動的に計算される時代です。

高等数学や統計学を修めた一部の人々しか扱えなかった検定が、今は門外漢でも利用できるということです。


では、歴史学でカイ二乗検定を扱う場合、どのような手順を踏んで算出まで導けばいいか?

書籍『自然石祭祀遺構の基礎的研究―巨石遺跡・磐座遺跡の時代を越えて―』で統計検定を使用した私が、実際にどのような試行錯誤を経て使用ツールとプロンプトを用いたか、備忘録と今後利用したいと考えている皆様へ向けて記録を残しておきます。

※2026年5月時点の情報です。めまぐるしく変わるweb環境のため、永久に使える方法とは限らないことをご了承ください。


【前提作業】データから分割表を作っておく

大前提として、検定で使用する「分割表」は事前に作っておいてください。

分割表は、何かの群ともう一つの別の群の数値を比較するために作られます。

たとえば、行を時代や場所などで設定すると、ある時代とある時代の何かを比べたり、ある場所とある場所の何かを比べたりできます。列は、単純な「あり/なし」や「Yes/No」などの二列分類でもいいですし、比較するに足る複数の項目を並べてもいいわけです。

分割表は基本的には2行×2列から構成されますが、別に3列・3行以上でもOKです(ただし検定後の評価に他の統計学的知識が必要になります)。

これらの分割表によって、何かの群ともう一つの群の間に、データ差や相関を見出しやすくなります。カイ二乗検定に使う場合は、ある群とある群の数値に相関関係があるか逆に独立関係にあるかを示すことになります。

どんな分割表を作るかは、まさに歴史研究をするあなたのオリジナリティーが発揮される部分です。数値化するために、件数を数えられる項目やカテゴリーがないかを探してみましょう。

歴史学における注意点を挙げるなら、同一線上で比較できないような不統一な群同士を比較することに意味はないでしょう。

また、分割表自体は百分率で表されることが多いですが、カイ二乗検定に用いる場合は百分率にせず、実際の数値(件数)で入力したままの表とすることに注意してください。


ありなし
A時代128144
B時代155230

表1:2つの時代の遺跡において、ある要素が認められるか認められないかを2行×2列分割表にしたもの(表内の数値は集計件数)


オンライン上の統計計算ツール

統計学の専門をかじっていない歴史研究者でも扱いやすいツールはあるのでしょうか。

一番かんたんなのは、インストール・ダウンロード作業をしなくてもブラウザ上の計算で完結するオンラインサイトです。


私が推奨するサイトとしては、エミュイン合同会社が運営する Reactive stat です。下にリンクを掲載します。

https://www.emuyn.net/stats/features

キャッチフレーズは「ブラウザだけで使える無料統計ソフト~信頼性の高い R で統計解析し、その結果を AI が解説します!」

サイトのコンセプトなどの詳細は上のリンク内をご確認いただきたいですが、一言で言えば、理数系に弱い私でも直感的に理解できるサービスでした。AI解説なしで統計解析するだけなら無料で利用できます。

怪しいサイトではなく、医学論文などでも対応できるように工夫が凝らされた設計です。統計検定の根拠も信頼性の高いと言われるR言語に基づいて行われており、サイト内の各記述を読む限り信頼が置けるサイトだと思います。

 Reactive stat でカイ二乗検定ができるページは下のURLです。

https://www.emuyn.net/stats/enter_and_analyze_two-way_table

ページ内にすでに分割表の欄が用意されているので、後はあらかじめ作成している分割表の数値を入力すれば、リアルタイムで検定結果が即算出されます。

元の分割表をExcelなどで作成している場合、コピペでうまくいける時とうまく貼れない時があります。元の分割表と見比べて誤りがないかよく確認しましょう。

先に例示した表1の分割表を Reactive stat に入力した場合、下のようになります。

Reactive stat にて作成

Reactive stat におけるカイ二乗検定結果例

カイ二乗検定の場合、次の3つの数値が算出されます。

  • Chi-Square 統計量 3.00
  • 自由度 1
  • p値 0.083

Chi-Square 統計量はカイ二乗統計量のことで、統計検定をする時に出される検定統計量です。この統計量の数値がいくつかによって、その分割表の群同士が相関か独立かを示唆する根拠となります。統計量が大きくなればなるほど、有意差があるという評価をします。

自由度は分割表の行数と列数で自動的に決まる数値ですが、その意味を理解して適切に取り扱うには正直、歴史研究者としては若干手に余る指標であり割愛します。

一番重要な指標は、最後のp値です。p値=確率であり、カイ二乗検定の場合はその分割表の数値の分布が偶然でも成立するものかどうかの確率を算出します。表1の例の場合、p値は0.083で8.3%という意味です。なにが8.3%なのかというと、この分割表は統計学的に8.3%の確率で偶然できあがる数値の分布ということです。

では、8.3%は確率的に高いのか低いのか。統計学では慣例的に有意差があるかどうかを判断する有意水準というものがあり、それは一般的に5%といわれています。

つまり、5%以上が出た場合は「有意差なし」、5%未満となった場合は「有意差あり」とみなします。どうやらこの有意差を5%で区分することが望ましいかどうかには多くの議論があるようですが、門外漢の歴史研究者にはどうしようもなく、現状通説的見解とされる5%有意水準を採用しておくのが妥当でしょう。

ということで、表1の場合は「有意差なし」の判定となります。A時代よりB時代のほうが「なし」の数が増えたように思えますが、統計学的には有意差があるとは言えない、という言いかたになります。


しかし、仮に表1の数値がこのように変わったらどうでしょうか。

表2:Reactive stat にて作成

A時代の「なし」を144から134に変えました。それ以外は同じ数値です。

表2でカイ二乗検定を実施した結果が下です。

  • Chi-Square 統計量 4.68
  • 自由度 1
  • p値 0.0305

検定統計量がさっきより増えて、p値は0.0305と小さくなりました。これは3.05%ということで有意水準5%未満になり、統計学的には「有意差あり」の判定となります。偶然起こるとは言いにくい、見逃せない数値の偏りなのです。

この、主観的に見れば「わずか」にも見える数値(件数)の違いを、統計学の根拠に基づいてp値という形で数量的な根拠を示してくれるのがカイ二乗検定です。

歴史研究者がやりがちな、大体これくらいの数値が出れば「高い割合」「低い割合」と評価してしまうのを、統計学的根拠に基づいて論ずることができるようになります。このことをクレール・ルメルシエ、クレール・ザルク[著] 長野壮一[訳]『人文学のための計量分析入門―歴史を数量化する―』(人文書院 2025年)は述べているのです。


カイ二乗検定が使えないならフィッシャー正確確率検定

しかし、これだけではまだ歴史研究者は安心して統計検定を使用できません。次は、カイ二乗検定を使えないケースがあることに注意が必要です。

それは、分割表の数値が少ない場合です。具体的な基準も決まっていて、分割表のセルに入る期待値が5件未満の場合です(最近は1件未満とする説もあるようですが、私には統計学領域の議論の判断がつかないため通説的見解の5件未満を採用します)。

期待値とは、いわゆる平均値と同義とされやすい概念ですが、平均値は実際のデータの単純平均であるのに対して、期待値はその名のとおり、データ標本で現れ出た数値が将来的にこれくらいになると理論的に期待される平均値となります。
表1の場合は次のとおり、Reactive stat 上でも「期待度数」という指標で計算できます。

Reactive stat で表1を期待度数表示した場合

ご覧のとおり、表1の場合は期待度数が5件をゆうに超えているので問題なくカイ二乗検定を使えます。いいかえれば、データ件数の多い分割表であればまずカイ二乗検定を使っておけば大丈夫です。

しかし、私が研究に用いたデータはそうではありませんでした。たとえば拙著には下のような分割表があります。

ありなし
A時代05
B時代052
C時代746
D時代543
E時代439
F時代319
表3:カイ二乗検定を使えない分割表の例

「あり」の要素が少なく、ほとんどの事例においてその要素が認められなかった場合、このような分割表が作成されます。
しかし、A時代、B時代に0件でC時代以降にわずかでも事例件数が存在するこの分割表において、主観ではなく統計的に意味がないかどうかを算出する意味はあるでしょう。

それでは、表3をReactive stat に入力して期待度数を表示してみましょう。

表3をReactive stat で作成

「あり」の列を見ていただければ一目瞭然ですが、期待度数で5件を上回っているセルが1つもありません。A時代の「あり」のセルは1件未満であり、最新の基準においてもカイ二乗検定には不適切な分割表となります。


では、カイ二乗検定が使えないならもう終わりなのかというとそうではなく、期待度数5件未満の統計表の場合は「フィッシャーの正確確率検定」(以下、フィッシャー検定と略)を使用することが推奨されています。

フィッシャー検定は、分割表の件数が少ない場合もカイ二乗検定のように、ある群とある群の相関/独立をp値で算出してくれる検定です。

カイ二乗検定との違いは、検定統計量が出ず、直接p値が出ます。また、カイ二乗検定に比べて膨大な計算量が必要となるため、データ数や列・行が多いと手計算どころかコンピュータ計算でも負荷がかかりすぎて計算エラーになる恐れがあります。
基本的には2列×2行の分割表であれば計算負荷はそこまでかからないといわれます。

とはいえ、Reactive stat では最大で6列×6行までの分割表について、カイ二乗検定と同時にフィッシャー検定の結果も自動計算してくれます。
カイ二乗検定結果のページをさらに下にスクロールすると下の画面が出てきます。
「Fisherの正確確率検定=フィッシャー検定」です。

Reactive stat におけるフィッシャー検定結果例

カイ二乗検定の時と違って、わかりやすくp値が書いてありません。
「Rの出力結果」と書いてある欄にこのようなテキストが表示されています。
      あり なし
A時代    0    5
B時代    0   52
C時代    7   46
D時代    5   43
E時代    4   39
F時代    3   19

#### Fisher の正確確率検定 

Fisher's Exact Test for Count Data

data:  .Table
p-value = 0.068
alternative hypothesis: two.sided

--------------------------------------------------------------
Analysis is conducted using R version 4.5.2 (2025-10-31) 
The script uses the following packages and versions:
この内の「p-value = 0.068」と書いてある部分がフィッシャー検定結果のp値です。
0.068ということで有意確率6.8%、すなわち統計的に「有意差なし」の判定です。

フィッシャー検定を用いることで、データ件数の少ない分割表においても、カイ二乗検定の代わりに有意差検定ができました。

フィッシャー検定で計算エラーが出る場合はモンテカルロ法を使用

Reactive stat が万能かというと、そうではありません。

たとえば下のような分割表の場合は、計算量の限界を超えたようでエラーが出ました。

表4:期待度数5未満があるのでフィッシャー検定を行うべき分割表の例(Reactive stat で作成)

表4のフィッシャー検定「Rの出力結果」は次のとおりです。

    列A 列B

行1   0   5

行2  19  33

行3  25  28

行4  34  14

行5  30  13

行6  14   8



#### Fisher の正確確率検定 



fisher.test(.Table) でエラー: 

  FEXACT error 7(location). LDSTP=18630 is too small for this problem,

  (pastp=64.2946, ipn_0:=ipoin[itp=71]=742, stp[ipn_0]=65.205).

Increase workspace or consider using 'simulate.p.value=TRUE'

実行が停止されました
「fisher.test でエラー」「実行が停止されました」のテキストが確認できます。そしてp値の表示が見当たりません。この場合、計算は失敗しています。

表3よりも表4のほうが全体のデータ件数が多いからこのようなことになるのだと思います。元来、フィッシャー検定は膨大な計算を伴うため2列×2行分割表に向いているとされる所以です。

こういう場合の対策方法はいくつかある模様です。
私なりにいろいろ調べた結果、たとえば下のwebページに参考となる情報がありました。

【フィッシャーの正確確率検定】エラーが出てしまって分析できないので... - Yahoo!知恵袋

Yahoo!知恵袋の問答ページですが、回答者は顕名の井口豊氏であり、同氏の研究室ホームページから統計解析の専門家でもあることがわかります。

回答結果をまとめると、解決法は大きく2種類。

  1. 計算に充てるコンピュータのメモリを増やす
  2. モンテカルロ法(モンテカルロシミュレーション)を用いる

1番目の方法であるメモリ増強の方法もいくつかあるようですが、私はうまくいかず撤退。
2番目のモンテカルロ法に頼みの綱を求めます。

モンテカルロ法とは何か?
計算回数の上限を決めて、正確な値ではなく近似値を求める手法です。当然ながら、計算回数が多いければ多いほど、より実際に近似した値が出ます。
フィッシャー検定は正確に出そうとすると膨大な計算を重ねて、コンピュータ的にはメモリの限界を迎えてエラーを吐きます。そのため、フィッシャー検定においてモンテカルロ法を適用することは有用なのです。

ではReactive stat でモンテカルロ法を適用できる設定はあるのかと確認してみたのですが、どうやら存在しない模様。
大変便利なブラウザ上計算ツールでしたが、どうやらここで別のツールに切り替えるしかないと判断しました。

最終的にEZRの運用を推奨

Reactive stat のサイトにも書いてありますが、統計の世界で信頼性があるのはR言語に基づいたプログラムです。

Reactive stat はその最も簡便なツールでしたが、フィッシャー検定を使いたいのに計算エラーが出る場合、もう一段階、専門寄りのツールに切り替える必要があります。

それがEZR(Easy R)です。

フリーソフトです。

Easyの名を冠するだけあって、これでもR言語プログラムを使いやすくしたというコンセプトですが、こちらはインストールが必要なアプリであり、Reactive stat サイトの言を借りると「統計解析の初心者には難しいという声も聞かれ」るそうです(だからReactive stat を公開した)。

私も最初ちんぷんかんぷんでしたが、フィッシャー検定のところだけ理解できればいいという心持ちで操作に慣れていきました。その手順をこちらにまとめます。


EZRのダウンロードページ

自治医科大学のHP内でダウンロードできます↓

https://www.jichi.ac.jp/usr/hema/EZR/statmed.html

なぜならEZRの開発者は、自治医科大学附属さいたま医療センター血液科教授(2026年5月時点)の神田善伸氏だからです。

Reactive stat もそうでしたが、EZRも含めて統計解析ソフトは主に医療統計分野で発展してきた経緯があります。医師や医学者が医学論文で用いるための統計解析を、統計に疎い人でも利用できるようにという思いで無償で公開しているものです。

だからといって医療分野限定の仕様ではなく、当然ながら統計学は数学の世界ですから、数量を扱うあらゆる分野の統計において活用できます。歴史学もありがたくこの恩恵にあずかりましょう。

Window版、Mac OS版、LINUX版が公開されているので、ご使用の機種に合わせてダウンロードしてください。

ダウンロード前に、HPに書いてある留意事項などは一通り読んでおいてください。注意点としては、無料で使用できますが、EZRを使って算出した結果はEZRを使用したことを出典として示すことが条件づけられています(当たり前ですが)。

その出典の記載方法もHPに例示されているのでご確認をお願いします。


インストール後の使用方法

ウインドウの指示どおりにインストールを終えると、ローカルのインストールフォルダ内に「EZR簡易マニュアル」(EZRman.pdf)があるはずです。まずはそちらをご一読ください。

マニュアルの一番下に解析可能な検定のチェックリストが画像に示されており、その中に「カイ2乗検定」「フィッシャーの正確検定」の項目があるのを見つけられるでしょう。EZRにこれらの検定機能が搭載されていることがわかります。


では、起動してからフィッシャー検定するまでの流れをスクリーンショット画像掲載で紹介しましょう。

EZRアプリを起動すると下のウインドウが自動的に表示されます。


しばらく時間がかかりますが、このウインドウをそのまま放置しておくと別のもう1つのウインドウがさらに出てきます。それが下画面です。

上画像のウインドウが検定作業をする画面となるのでご注意ください。

まず通常の検定方法を説明します。

ツールバーの「統計解析」▶「名義変数の解析」▶「分割表の直接入力と解析」をクリックします。


すると下のウインドウが出てきます。


分割表を直接入力できます。

自分で用意した分割表の行数・列数に増やして数値を入力し、「フィッシャーの正確検定」にチェックを入れた状態で「OK」ボタンを押せばRプログラムが働いて自動的にp値結果を算出してくれます。

が、Reactive stat と同様に、表4のようなデータ数の分割表ではエラーが返ってきます。

見た感じ、このウインドウではモンテカルロ法の設定が見当たりません。

ということで、EZRの「Rスクリプト」画面に、直接スクリプトを打ってモンテカルロ法を用いることを指示しなければなりません。

先に紹介した井口豊氏の記述を参考にして色々試した結果、下のスクリプトであれば正常に検定できました。


dat<- matrix(c(

0, 5,

19, 33,

25, 28,

34, 14,

30, 13,

14, 8

), ncol=2, byrow=T)


fisher.test(dat,

simulate.p.value = TRUE, B = 1000000)


分割表の行数・列数に応じてスクリプト内のテキストを変える必要があるので、応用できるように、このスクリプトのそれぞれの意味を説明します。


dat<- matrix(c(

マトリックス(分割表)のデータであることをRに指示するコードです。


0, 5,

19, 33,

25, 28,

34, 14,

30, 13,

14, 8

表4の分割表をスクリプト画面に打つ時の形がこうです。

行ごとに列のセルの数値をコンマと半角スペースで区切りながら入力していきます。

表4は6行×2列なのでこうしていますが、3列や4列なら行の右側にコンマで区切りながらセルの数値を入力していってください。

要注意点は、一番最後の行・列(一番右下)の数値の後にはコンマを入力しないこと。私は当初ここにコンマを打ったことでひたすらエラーが出て悩まされました。


), ncol=2, byrow=T)

「ncol=2」は2列という意味。Rに列数がわかるように指示しています。ですので、3列や4列なら「ncol=3」「ncol=4」のように変更しておいてください。

「byrow=T」は、行の横方向の順番で読み込んで表データを作成するようにRに指示するコードです。

つまり、これによって2列の分割表を行の横方向に読み込めるようになるということです。


fisher.test(dat,

フィッシャー検定を実施するためのコード。


simulate.p.value = TRUE, B = 1000000)

これがモンテカルロ法で近似的なp値を算出するためのコードです。

「B = 1000000」は、試行回数を1,000,000回に指定するという意味です。

モンテカルロ法で試行回数を何回に指定するかは、用いるデータや目指す研究目標によって様々だそうです。

私は、エラーが出なかった分割表を使って、EZRでこの試行回数を「B = 1000」「B = 10000」「B = 100000」…と数値を変えながら算出されるp値を見比べて、最終的に1,000,000回計算すれば実際のフィッシャー検定結果のp値と近似すると判断して、このようにしました。

皆さんも、用いるデータや調査精度に合わせて試行回数を調整してください。


ということで、このスクリプトをEZRの画面に入れてみましょう。


要注意点は、入力したスクリプトを「すべて選択」した状態にして「実行」ボタンを押すことです。選択してスクリプト範囲を青くした状態にしないとエラーとなります。

正常に実行された結果が下画像です。


「出力」欄に「p-value = 0.000157」の文字が確認できました。

有意確率0.0157%ということで、表4の分割表の数値の分布は、極めて0%に近い強い有意差が示されました。

2×2分割表なら、1行目と2行目に有意差があるということを明確に示しますが、3行以上や3列以上となると、どの行・列のセルに有意差が認められるのか(有意に多いのか/有意に少ないのか)を特定する作業が別途必要です。

カイ二乗検定やフィッシャー検定は、分割表全体を見て有意差があるかないか自体を検定するものであり、表のどことどこに有意差があるのかまでは示してくれないからです。

どのセルに有意差があるのかを評価する方法に「調整済み標準化残差」の分析があり、この値が1.96を超えるセルはp値が5%未満で有意差があると判定しますが、このあたりまでいくと本記事の目的のさらに先の内容に突入するので、説明はここまでとします。


数名の読者の方のお役に立てばそれでよいと考えて書きました。

『自然石祭祀遺構の基礎的研究―巨石遺跡・磐座遺跡の時代を越えて―』の補遺として、本記事も大きな仕事ができたと思っています。


参考文献(EZR出典)

Kanda Y. Investigation of the freely-available easy-to-use software “EZR” (Easy R) for medical statistics. Bone Marrow Transplant. 2013:48,452-458. advance online publication 3 December 2012; doi: 10.1038/bmt.2012.244


2026年4月24日

[発売日宣伝]『自然石祭祀遺構の基礎的研究―巨石遺跡・磐座遺跡の時代を越えて―』

本日発売されました。


Kindle版はこちらから

(Kindle Unlimitedに登録の方は無料で読めます)

https://amzn.to/4uceXRb


ペーパーバック版はこちらから

(紙書籍版)

https://amzn.to/4uckxTH


電子書籍版の商品ページでは全体の1割ほどサンプルを読めます。

序盤のツカミが結構読めますので、こちらで購入に値するかご判断いただければ幸いです。


2026年4月19日

収録図表紹介『自然石祭祀遺構の基礎的研究―巨石遺跡・磐座遺跡の時代を越えて―』

商品ページにサンプル画像が公開されました。


資料性の高い文献を目指して、図・表も豊富に用意しました。

巻末付表


  • 第1表 自然石祭祀遺構データ
  • 第2表 分析項目の割合
  • 第3表 算出された割合に対する各事例数の誤差範囲
  • 第4表 「岩塊」分割表
  • 第5表 「岩群」分割表
  • 第6表 「岩山」分割表
  • 第7表 「洞穴」分割表
  • 第8表 「凹」分割表
  • 第9表 「人為性」分割表
  • 第10表 「配石遺構」分割表
  • 第11表 「地中」分割表
  • 第12表 「地表」分割表
  • 第13表 「石の上」分割表
  • 第14表 「石の下」分割表
  • 第15表 「石の間」分割表
  • 第16表 「石の周囲」分割表
  • 第17表 「山裾」分割表
  • 第18表 「山腹」分割表
  • 第19表 「山頂」分割表
  • 第20表 「尾根上」分割表
  • 第21表 「谷間」分割表
  • 第22表 「島嶼」分割表
  • 第23表 「海辺」分割表
  • 第24表 「川」分割表
  • 第25表 「経塚」分割表
  • 第26表 「建物跡」分割表
  • 第27表 「墓」分割表
  • 第28表 「寺社」分割表
  • 第29表 「城郭」分割表
  • 第30表 「鉱物」分割表
  • 第31表 「壇状整形」分割表
  • 第32表 「土坑」分割表
  • 第33表 「破損」分割表
  • 第34表 「底部穿孔」分割表
  • 第35表 「焼け跡」分割表
  • 第36表 「神聖視」分割表
  • 第37表 「特別視」分割表
  • 第38表 「岩相」単語登場頻度表
  • 第39表 「岩種」単語登場頻度表
  • 巻末付表


  • 第1図 現地撮影写真
  • 第2図 自然石祭祀遺構分布図
  • 第3図 縄文時代遺構分布図
  • 第4図 弥生時代遺構分布図
  • 第5図 古墳時代遺構分布図
  • 第6図 古代遺構分布図
  • 第7図 中世遺構分布図
  • 第8図 近世以降遺構分布図
  • 第9図 各時代の遺物構成
  • 第10図 地質図上の自然石祭祀遺構分布図


商品ページには過去作のリストも掲示しています。

この機会に併せてお見知りおきください。


2026年4月13日

見本紹介『自然石祭祀遺構の基礎的研究―巨石遺跡・磐座遺跡の時代を越えて―』

新刊の宣伝が続きますがご容赦ください。

校正刷り見本が届きました。

中心に再販禁止の帯が入っています。実物にこの帯は入っていません。

本文100頁の小冊子ですが、背表紙にタイトルを印字できるくらいの分厚さはあります。

約5万字で、論文としてはそれなりのボリュームとなりました。

オール白黒印刷の論文抜き刷りのようなものをご想像いただければと思います。

ただし、表紙を光沢なしにしていましたが、ホコリのつきやすそうな手触りで手指もベタっとしやすいと感じました。仕様を光沢ありに変えることにします。


巻頭文を掲載。こんなテイストです。読めますでしょうか。
電子版では文末脚注でしたが、閲覧性を考えてページごとに脚注を掲載するようにしました。


資料性抜群だと思います。
まじめに岩石信仰を考えてみたい方、必携です。
いつものことですが、こんなのあったらいいなあと私が思う本を目指しました。

販売前につき本文にはモザイクをかけましたが、左のページと右のページでボリュームが異なるのがわかるでしょうか。

元は電子書籍のため、図版の挿入位置や文章の改行の位置が綺麗ではないところもあります。ですが、できるかぎり見やすい(文章と図版が一致する)ようにした結果です。


ここから細かい修正を行い、予定どおり4月24日に電子書籍版・ペーパーバック版の両方を販売予定です。

ペーパーバック版をお求めの方は予約ができませんので、発売日まで購入ページをお待ちください。


2026年4月6日

『自然石祭祀遺構の基礎的研究―巨石遺跡・磐座遺跡の時代を越えて―』電子書籍版予約開始しました

新刊のお知らせです。

――内容紹介――

原始宗教の痕跡とされてきた巨石遺跡・磐座遺跡は真に祭祀遺跡と言えるか。これまで日本列島で確認されてきた自然石祭祀遺構を分布・統計・地質面から精査し、従来の通説を見直す。読者特典として「自然石祭祀遺構データ」ダウンロードキーが付属。

※本書をページ番号指定して引用する場合は、電子書籍版ではなく同日発売予定のペーパーバック(紙書籍)版の購入をお薦めします。


――目次――

第1章 はじめに
 第1節 問題の所在
 第2節 数と量の不在

第2章 自然石祭祀遺構の定義
 第1節 遺跡・遺構・遺物
 第2節 自然石の混沌性

第3章 自然石祭祀遺構のデータ
 第1節 事例の収集方法とデータの公表方法
 第2節 データの概要
 第3節 除外された事例群

第4章 地図上の分布と傾向

第5章 分析方法とその限界
 第1節 統計的前提
 第2節 統計検定の採用
 第3節 データの入力基準

第6章 分析結果
 第1節 集計表の割合から
 第2節 検定の実施と評価
  岩石の形状に関して
  自然石における人為性に関して
  遺構発見状況に関して
  遺物発見状況に関して
  山岳立地に関して
  地形要素に関して
  周辺の自然物・遺跡・施設に関して
  遺構・遺物面の各要素に関して
  岩石に対する認識に関して
 第3節 遺物構成
 第4節 地質情報

第7章 数量的分析から定性的に記述できること

第8章 おわりに

巻末付表


2026年4月24日発売。今作は Amazon Kindle 上での発売としました。

KindleはAmazonの電子書籍ですが、あわせて紙書籍版(ペーパーバック)も作りました。


Kindle Unlimited 対象の書籍ですので、サブスク登録されている方は発売日以降になったら購入せずに読めます。

Kindleを使わない方は紙書籍版をお求めください。


元は論文として書き始めましたが、論文としては長すぎて、本としては100ページの小冊子です。

価格もそれに合わせましたが、Amazon側の印刷コストと最低販売単価があるので、赤字にならない程度の価格で設定させていただきました。

※電子書籍版660円(税込)

※ペーパーバック版1,210円(税込)…B5判の論文抜刷のようなものとお考えください。


肝心の内容ですが――歴史的な刺激に満ちた、面白い内容になったと思います。

上の内容紹介と目次でご想像いただければ幸いです。


注文先はこちら↓


2026年3月28日

なぜ岩石に字を刻むのか


四日市市文化協会誌『パッション』78号に掲載。

pdf版はこちらからどうぞ。


2026年3月21日

拙論が論文賞の表彰を受けました

 『地質と文化』第5巻第1号(2022年)に投稿した、

「『古事記』『日本書紀』『風土記』は岩石をどう記したか ―奈良時代以前の岩石信仰と祭祀遺跡研究に資するために―」

が文化地質研究会論文賞を受賞しました。


今後も研鑽に努めます。

本論文はpdf公開されております。下のURLからどうぞ。

『地質と文化』第5巻第1号pdf(拙論はpp.1-71です)


2026年3月14日

大慈山岩屋寺奥之院の岩窟(愛知県知多郡南知多町)


愛知県南知多群南知多町山海字岩屋


大慈山岩屋寺は尾張高野山の通称で知られる知多四国霊場屈指の古刹であり、岩屋山中腹に存在する岩窟を中心に奥之院の行場が築かれる。

弘仁7年(816年)、弘法大師が百日の護摩修法の後に、岩窟の岩穴へ聖観音を安置したという。自らの像を納めたことから身代大師と称した。

岩窟を取り込むように本堂が構築されている。日中仄暗く全貌は把握できないが、奥の院の主体は建物ではなくあくまでも岩穴であり、堂の背面は岩肌が剥き出しになっている。

拝堂と本堂の間に弘法大師御腰掛石があることを後で知ったが、確認し逃した。

岩屋寺

堂背後の岩窟(一部)

堂内の岩肌露出部分

参考文献

  • 「尾張高野山 岩屋観音 弘法大師 略縁起」(岩屋寺発行の由緒書)
  • 中根洋治「南知多の岩屋」『愛知発巨石信仰』 愛知磐座研究会 2002年
  • 南知多町誌編さん委員会 編『南知多町誌』本文編,南知多町,1991.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9540826 (参照 2026-03-14)


2026年3月8日

つぶて岩(愛知県知多郡南知多町)

愛知県知多郡南知多町内海


内海海岸につぶて浦と呼ばれる場所があり 、海岸に1基の鳥居が建っている。

鳥居の先には岩礁があり、その中でとりわけ大きい岩がある。これが「つぶて岩」である。

伊勢の神々が力比べをしようと海に向かって岩石を投げてその飛距離を争った。その中で対岸の知多半島に届いたのが、この「つぶて岩」という伝説が残る。

鳥居越しに伊勢湾が広がり、その対岸は伊勢神宮の方角だという。伊勢神宮を対岸から遥拝するための場所として、大正時代にこの鳥居が設けられたといわれる。


参考文献

中根洋治 『愛知発 巨石信仰』 愛知磐座研究会 2002年


2026年3月1日

穴観音(岐阜県中津川市)


岐阜県中津川市苗木


長さ約6mの自然石の下に形成された隙間を使って仏をまつる窟とした。

側壁は人工的に石積みをして補強されている。

天井石は通称「傘屋根」と呼ばれており、張り出した胴部を巡るように幅・深さ共に十数cmの溝が刻まれている。これは、雨水が岩窟内に入らないための仕掛けと考えられている。

周囲には摩崖仏や供養塔も存在。

傘屋根に刻まれた溝

堂内側壁

創建時期は不詳だが、堂内や境内には宝暦10年(1760年)製作の観音、天和3年(1683年)没の雲林寺五世一桂和尚造立の地蔵尊、元禄年間(1688~1704年)造立の供養塔などが現存することから、おおよその隆盛期を窺うことができる。

また、すぐ近くに龍渓寺という寺院があったという。明治時代初頭の廃仏毀釈の際に廃寺となったが、同寺の仏像や石仏などはこの窟や地中に隠されて難を逃れたという逸話が付帯している。

参考文献
中津川市教育委員会 編『中津川市の文化財』,中津川市教育委員会,1983.2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12707103 (参照 2026-03-01)

2026年2月22日

日輪神社の「磐境」「太陽石」説(岐阜県高山市)


岐阜県高山市丹生川町大谷字漆洞


日輪神社は天照皇大御神を祭神とする。日輪宮という別称もある。
創立年代不詳ながら、本殿は宝暦4年(1754年)の建築ということはわかっており、市指定文化財である。

1938年、軍人の上原清二が『飛騨神代遺跡』を発表し、日輪神社は太古「ピラミッド」「弥広殿」と呼ばれる太陽祭祀遺跡だったという説を主張した。
日本ピラミッド説提唱者である酒井勝軍の講演会を聞いて感化された上原が、飛騨高山が太古日本の中心地であったということを説明する中で取り上げられたものと思われる。

日輪神社の社叢を里から見ると鋭角的な三角形の山容をもつため、これがピラミッド型と呼ばれる所以である。社殿裏山の尾根先端までの比高差は約100mと目される。

日輪神社の山容

上原『太古之日本』天之巻(1950年)・地之巻(1952年)の中では、日輪神社の社殿が建つ部分が平坦加工された拝殿部であり、背後の裏山には高さ約20mの円錐形の神殿部があり、この円錐形拝殿部はどこを掘ってみても川石が出てくることから、自然地形の尾根上に人工の山形を持ったものと述べている。
また、円錐形神殿部の頂上には、酒井勝軍で言う複葉内宮式(内側に方形の列石が巡り、外側に環状の列石が巡るというもの)の磐境の一部が現存していると記す。上原が現地を訪れた時、外円の列石は残っていなかったが、内方形の列石の一部が残っていたということである(同書の附図によると4個の岩石が存在)。

私が2009年に尾根頂上を確認した限りでは、1個の小ぶりの岩石しか目視できなかった。

日輪神社社殿と裏山

裏山頂上(丘陵尾根先端部)に確認できる岩石1個

磐境の中心に置かれていたとされる太陽石は、現在、本殿の傍にある約2mの岩石がそれであろうと上原は推測している。
これは現在も本殿向かって右脇に現存している。

本殿向かって右脇

太陽石と目される岩石(写真左奥のブルーシートは本殿工事中)

上原の聞き取りによると、この岩石はかつて裏山にあったもので、約40年前(著作の発表年から考えると1910年頃?)にここへ持ってきて、丸形の石であったがこれを割って土止めのために使用したとの話を紹介している。

社殿向かって右隅に、尾根の南側を巻くように歩ける踏み跡があり、その先にも「太陽石」がある。

太陽のマークを書いた道標。もう一つの太陽石への道筋を示す。

道標を歩いた先に存在する岩石。

岩石の表面には、金属で穿たれたであろう点線状の直線が2本残っている。石割りのための楔の跡と考えられる。

なぜ太陽石が2つあるのかわからないが、少なくとも上原の著作を読む限りでは本殿脇の岩石が元々の太陽石の残骸であり、この楔跡の岩石は後発の太陽石だと思われる。


いずれにしても、古来から地元で伝承されてきたという意味での磐境でも太陽石でもない。日本ピラミッド説という枠組みの中で語られた概念世界の岩石である。昭和戦前期の岩石信仰を取り巻く言説を今に伝える近代遺産であることは間違いない。


参考文献
上原清二『世界の神都 飛騨高山』八幡書店 1985年・・・上原清二の数々の著作を1冊の本にまとめたもの。『飛騨神代遺跡』『太古之日本』『神代遺跡実地調査報告書』ほかを所収。

社頭に置かれた岩石。盃状穴(杯状穴)のような穴が数箇所開けられている。