2017年3月19日日曜日

賀茂神社の神籠石(群馬県桐生市)


群馬県桐生市広沢町

賀茂神社の祭典の前夜、神籠石で榊に神を降ろし、台待窪で榊を神輿に乗せ、「休め石」に神輿を降ろしながら、神社へ神を迎える神事が明治維新の頃まで行われていたという。
しかし、戦後しばらくして、近年は賀茂神社の神職の方も足を運ぶことがなく、正確な位置もあやふやとなっていた。

この神籠石について、2007年2月に賀茂神社の神職さんへ話を伺った。

・この岩石の読み方は?

「かわごいし」。しかし神職さんが言うには、元は「かむごいし」ではないかとも。「神が籠る」という意味を重視されていた(つまり「かむご」は神職さんの考えが入っている可能性あり)。

 また「こうごいし」はどうですか?と聞いてみても通用したが、これはいわゆる神籠石の知識があるから通用したのかもしれない。

・なぜ近年は祭祀されず、所在が分からなくなったのか?

神職さんと連れの年配の方の話によると、昔はちゃんと手入れをしてまつっていたとのこと。
戦前までは、神籠石の周囲四方に竹を立て、注連縄を張っていた。そして春と秋の2回、赤飯・塩・水(酒だったかも失念)をお供えして祈願祭祀していた。

それが昭和20年代前半に来た台風により周辺一帯が被害に遭い、その時に神籠石が斜め下に傾き崩れてしまったとのこと。
この台風により里も大被害を被り、神籠石への道も倒木やら山崩れやらでしばらくの間行けなくなってしまい、そうこうしている間に神籠石への祭りは途絶えてしまったという。(注1)

近年の神籠石が見向きもされなかったのもその延長線上で、年配の方しか神籠石の存在を認識していない状態だった。

・神籠石へのタブー

タブーは特になかった様子。神職さんも子供の頃は神籠石の上に立ち登ったりして遊んでいたというので、戦前の頃は少なくとも畏怖的というより、親近的な信仰だったのだろう。


そんな神籠石だったが、2007年頃より、楚巒山楽会代表幹事が中心となって山中隈なく探索された結果、2009年3月に土木に半ば埋もれつつあった神籠石を再発見。
往時の神籠石を知る地元の方のお墨付きもあり、神籠石の所在が約60年ぶりに確認された。
神籠石の表面を覆っていた土木は取り除かれ、手前には神籠石を示す看板も設置された。

しかし、神社や地元自治体が定期的な管理をしているわけではない。
管理人が訪れた2010年には、すでに山荒れが進んでおり、道も倒木もひどく多かった。立てられた看板も後に消失したという。祭祀されない山中の岩石は忘却が進みやすい。

Googleマップ上にも目印がつけられたが、GoogleマップのポイントはGoogleの仕様変更やユーザー側のアップデートによって消える時があり(2017年はあり、2019年はなくなり、2020年にはまた復活した。今後も同様の繰り返しが起こりうる)、安定感に欠けるところがある。所在地について語り続けて、忘れられることはないように当サイトでもその一助を担いたい。

神籠石再発見までの経緯については、2007年以降リアルタイムで書かれてきた下記出典サイト・ブログの各記事に詳しい。
当サイトもこの神籠石について、2007年以降試行錯誤の踏査や的外れの仮説などの更新を重ねてきたが、あえてその駄文は割愛させていただき、ここに簡潔ながら事実の報告と参考文献・サイトの紹介を永久に記録しておくことで、せめてもの罪滅ぼしとしておこう。

なお、桐生市教育委員会文化財保護課・編『桐生市埋蔵文化財分布地図・地名表』(1994年)に史跡登録された「川越石」はこの神籠石と同一物を指すものと思われるが、地図に落とされた位置は全く別の谷間であり、遺跡地図が示す場所が間違っている。後学の方が騙されないようにここにはっきり記しておく。

神籠石へのアクセスルート


神籠石
賀茂神社前に掲示された神籠石の位置を示す地図。
この地図だけでは到底辿りつけないだろう。

神籠石
神籠石に取りつくルートは山荒れが激しく、倒木とブッシュに見舞われる。特に夏に訪れる時は注意である。

神籠石
2010年時点での神籠石。2009年に建てられた看板が健在。

神籠石
看板裏に刻まれたメッセージ。いろいろなストーリーがあって立てられた。

神籠石
神籠石近景。元来は頂面が水平で、戦後の台風で斜めに傾いてしまったという。


2019年4月15日追記


この桐生の神籠石を実地踏査した大場磐雄氏の研究メモ『楽石雑筆』巻15(昭和12年)によると、すでに大場氏が来たときには場所もよくわからなくなっており大場氏たちが探す有様だった(地元民が同行していなかったからか)。
大場氏たちは踏査の末、石下から水が湧き出る方形のこの神籠石を木葉の下から見つけた。すでに祭祀が行われていなかったような様子である。
宮司の方が私に語った、昭和20年代の台風によって祭祀が途絶えたあたりの話がどこまで事実かは冷静に見ないといけない。

参考文献




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