インタビュー掲載(2024.2.7)

2016年8月17日水曜日

小泉八雲「日本の庭―抄―」~『日本の名随筆 石』を読む その7~

――日本の庭園美を理解するためには、ぜひとも、石の美しさを理解すること。

まるで『作庭記』のようなことを言う小泉八雲は、事前のイメージ通り、日本人の精神性を事細かくついてくる。石一つとっても、その記述に手は抜かれていない。彼をそこまで突き立てた衝動は何だったのだろうか。

――人間の手が細工を施した石の美しさではない。天然自然によって形のそなわった石の美しさである。

日本人は生まれながらにして、自然のあるがままの美しさを身につけているから、欧米人は日本で暮らして感得してみるべしと薦める。
いや、今の日本人もどうかな・・・自分含めて自信はない。

――ちょっとそこらの町を歩けば、諸君の修むべき石の美学の問題集は、見まいとしても目にはいってくる。寺院の入口、道のはた、鎮守の森の前、さては到るところの公園・遊園地。あるいは墓地

四角四面に切った石柱や、神仏を彫りこんだ石碑よりも、自然石を用いた墓石のほうが値段は高いという。
自然石に数多く触れることで、自然石それぞれの性格、そして、自然石の色調や明暗を知ること ができるという。

――かりに諸君が、多少でも生得の美的感覚をもちあわしているとすると、これらの自然石が、石工の手に切り刻まれたどんな加工石よりも、それほど美しいかということを、遅かれ早かれ、かならず発見されるにちがいない。

若干の上から目線は置いておき(笑)、ありふれている光景こそが、美しいという価値を持つことを八雲は論じていると言える。ありふれているのに、美しいと認めることは相反する現象にはなりはしないか。
異形な石、巨大な石こそが、価値を持つのではないか。そう後世の学者は説明してきた。

――石の形によって、文字のあるなしがきまっているかのごとく、この石なら文字がない、この石なら文字がないはずだと、文字のない石、ないはずの石に、べつの彫刻、あるいは碑銘のようなものを、しぜんと捜すようなことになってくるだろう。

墓碑や石碑、石塔、石仏に、精緻に掘りこまれたものと、なぜか自然のままのものがある。
そこに法則性や一体感は一見認められない。
しかし、石の形によって文字のあるなしが決まっていたとするなら、私はその次元に達していない。

――とくに日本の国は、石の形に暗示的なものが多い国だ。(略)天然物の形からくる暗示が、こんなふうに認識されている国では、おそらくそういうこともあろうと想像されるとおり、日本の国には、石に関する奇妙な信仰や迷信がじつにたくさんある。

八雲はその例の1つとして、釈迦のことばを説いた相手が、大燈大師にお辞儀をした石だったという話を取り上げているが、このチョイスがすでにマニアック。
どこにある何という石なのか思い当たらない。ご存知の方はお教えください。

2016年8月11日木曜日

生名島の岩石信仰(愛媛県越智郡上島町)



立石/メンヒル

生名島
巨石好きの間ではあまりにも有名なこの事例。
やっとお目にかかれることができ、素直に感動。

 奥に立石山が控える
 
この立石は、生名島の石ではなく、海上運搬されたという看板が立っていることでも有名。 
その割には、石質が書いていない。また、表面を見ただけでは石質はわからない(それくらい目視による石の同定は難しい)こともあるのにはっきり断言して良いのか。こういうのも批判的に見ていきたい。

立石山遺跡

生名島
生名島は、因島から車ごとフェリーに積んで移動できる。
(写真対岸が因島。フェリー移動時間5分)

生名島
山頂の立石山遺跡。大小の露岩が散在する。
磐座と名付けられ、一部に杯状穴・陽石・陰石との名称も当てられている。
命名時期・命名者は不明。

生名島
写真左手前が陽石

陰石。山頂から少しだけ北側斜面を下る。
規模もそこまで大きくなく、陰陽の関連性を認めるには説得力が足りない。


立石山遺跡は弥生時代の高地性集落遺跡の例として取り上げられることがある。
集落(軍事)遺跡と、祭祀遺跡の両立は十分あるが、ではこの露岩群がすべて祭祀用とは言えない。
もちろん、生活(軍事)用としてすべて見るのもよく分からない。
むしろ生活面と祭祀面を二分するのがナンセンスであり、同時に語られて初めて実際に即していると言える。


2016年8月7日日曜日

艮神社(広島県尾道市)

所在地:広島県尾道市長江一丁目3-5



艮神社


拝殿に隣接して、上写真の岩塊に注連縄が巻かれている。

訪問時点では、鳥居より先は安全上の理由で立ち入り禁止となっており、近くから観察することはかなわなかった。

この岩塊の名前が紹介されていない。
「磐座」と呼んでいる人もいるが・・・早計である。

千光寺(広島県尾道市)

所在地:尾道市東土堂町15-1




玉の岩

三重岩

有名すぎて・・・
ここは、私がコメントするよりも、もっと有益な情報を載せている方がweb上に何人もいます。

寺務所で『千光寺と文学のこみち』(2012年)購入。ここでしか買えない本。
境内地の岩の情報も比較的まとまっています。