2021年3月28日日曜日

玉比咩神社の玉石と臥竜稲荷神社奥宮の岩壁(岡山県玉野市)


岡山県玉野市玉


玉比咩神社は臥龍山の山裾に位置し、境内の一角に巨大な立石があることで知られる。




かつてはここまで海岸が迫り、立石は海岸に屹立していたという伝えがあることからか、現在は池中に浮かぶ姿で整備されている。

立石をまつる立石神社も境内社として石祠が献ぜられているが、立石はもともと玉石と呼ばれ、中世以降に立石の名称が定着したと伝わる。

立石神社の石祠。参拝方向に玉石が来るように設えられている。

玉石には伝説がある。

ある夜、玉石から火の玉が3つ飛び出して、背後にそびえる臥龍山中腹、西大寺観音、牛窓の3ヶ所に落ち、玉石には火の玉が飛び出した時にできた円形の窪みが残るという。

玉が玉を生むという意味では、古墳時代の子持勾玉にも通ずる思想であり、石自体が霊性を発動するという点で、きわめて石神的な性格が濃い事例である。

また、臥龍山中腹、西大寺観音、牛窓の3ヶ所の神聖性を歴史的に担保する聖地としての側面もあるだろう。

火の玉が落ちた1つである臥龍山中腹には、現在、臥竜稲荷神社奥宮が鎮座している。

玉比咩神社背後の臥龍山

臥竜稲荷神社奥宮

岩壁に拠りつく社殿

かつてここに玉比咩神社の社殿があったという旧跡でもあるが、臥竜稲荷神社奥宮の背後には岩壁が露出しており、ただ意味なく山腹を選定したのではなく、岩石の露出する場所に社を構えたという意図も窺われる。

ただし、この岩壁に関する記録・伝承ははっきりしておらず、岩石信仰の資料としては現状、判断保留とせざるをえない。

向かいの大仙山にも無数の巨岩群が露出しているのが麓から確認でき、これらは特別視の領域と思われるが、地質的に岩盤への特別視や神聖視が起こりやすい地だったとも言える。

臥竜稲荷神社奥宮から大仙山を望む。


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