愛媛県松山市道後湯之町
踐み健びましし跡處、今も湯の中の石の上にあり。
伊予国風土記逸文(秋本吉郎校注『日本古典文学大系2 風土記』岩波書店 1958年)
大穴持命が、重症の宿奈毗古那命を蘇らせるため、別府から伊予へ引いた湯に浸したところ快癒し、そのとき踏みしめた跡が石上に残るという。
今の道後温泉に存する「玉の石」がこの伝説の岩石とされている。
伊予国風土記は完存しておらず、本記述は『釈日本紀』巻十四、『万葉集註釈』巻第三に引用された形で伝わったものであり、いわゆる風土記の時代まで遡れる伝説かは確定できない。
また、玉の石の岩石は地表から浮いていることや、周辺環境は開発が進んだ都市部の中でありつづけてきた岩石のため、玉の石がどれだけ原状をとどめてきたか、伝説の岩石を指すものかは不明である。
道後温泉開湯の由来を伝える鷺石 |