静岡県伊東市八幡野
八幡野の海岸に「堂の穴/堂ノ穴」と呼ばれる自然の岩窟がある。
当地をかつて岩倉と呼んだ。


土地の伝承によると、三島大神とその兄弟がこの海岸に来臨、鎮座した場所だという。
別の口碑では、伊波久良和気命が鎮まった岩窟ともいい、式内社・伊波久良和気命社の旧社地とも目されている。
後に、この岩窟に宿っていた神を内陸部に遷座し、そこはいま八幡宮来宮神社としてまつられている。
伊豆に散見される来宮の神のひとつであり、民俗学的には漂着神信仰を伝える場として知られている。
地名と神名の両方に「いわくら」を伝えるが、肝心の洞窟の名は「堂の穴」として伝わる特殊な例である。いわくらの神であり信仰であることは論をまたない。
座席のような宿りかたをする「くら」ではなく、蔵・倉として内部に宿る「くら」と言える。
「堂の穴」は海岸の岩盤が浸食で庇状に削られたものであり、入口が広く開いているため、洞窟というよりは岩陰のような空間を形成している。
岩肌には無数に剥離面・断面が入り乱れており、平滑面には模様のようなグラデーションが走り、岩石信仰としては特徴的である。この岩の自然の造形が信仰と無関係と断じることはできない。


現状、岩窟内には多数の祠や石仏・石碑が林立しており神仏習合の地となっており、それぞれが石の基壇や自然岩の上に建てられている。
また、祠の中には大小の石を献じた跡も残っている。



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