静岡県袋井市西同笠
袋井市には寄木神社が三社あるが、その中で最も原型とされるのが西同笠の寄木神社である。
その証左とされる存在が寄木神社向かって西側に鎮座する、境内社の津島神社の特異な社の在りかたである。
津島神社 |
津島神社を背後より撮影。写真手前の配石は炉か。 |
葉で覆われた高さ1.6mの高床式の建物である。
竹4本を四方に立てて、中心に立てた白木の角材の上に神札を付け、その周りを大量の葉で覆い塀とする。葉は境内に繁る杉の葉が用いられる。
極めて原初性の高い建築であり、遠州灘沿いの海岸部において寄木という地名から、海からの漂着神信仰に由来するものではないかと考えられている。
その漂着神のよりつく霊代としての木の信仰が、地名と立木の祠に現れ出たということになるが、岩石信仰の観点から注目されるのは、祠を設けた場に敷かれる「砂」である。
津島神社の聖域に敷かれた砂(雨天時の撮影のため祠の周囲は濡れている) |
この祠が建てられる聖域には約二メートル四方にわたって、高さ五センチほど白砂が盛られている。そして、前面の二本の自然木を柱として注連縄が張られている。この祠の造営は毎年交替で一〇名ずつの神役によって行なわれる。神役は部落の南にあたる遠州灘で禊ぎを行ない、続いて、渚の清浄な砂を社域用として境内に運び、その後、杉の葉と竹で祠を造るのである。野本寛一『石の民俗』雄山閣出版 1975年
野本氏は、砂運びが年1回という定期的な間隔でおこなわれていることを指摘し、定期的な祭礼で招く神の座として砂が機能していたことに注目する。
砂は、海や水にかかわる神の座として相応しい媒体であるばかりか、「砂は石の小極」とみなす立場から、各地の神社で白砂が敷かれることの意味もあらためて問うている。
岩石信仰における「砂」の聖性を示す典型例と言える。
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