愛知県田原市石神町
雨乞山(標高233m) |
雨乞山は海抜三百米で、頂上に小さな雨乞神社がある。この社には御神体として、石剣が奉祀してあったもので、夏日旱天が打ち続いて、水田が旱魃し農家の困る時は村中の者が参籠して、御祈祷をしたもので、幾日も打ち続いて、此の御神体なる石剣に湿気を帯びて来ると必らず降雨のあったもので、霊験あらたかな神として、信仰があつかった。泉村々史編纂会 編『泉村々史』,泉村々史編纂会,1956. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2991712 (参照 2025-08-24)
石剣とはいうが、いわゆる弥生時代の磨製石剣のような整ったものとは異なり、写真(前掲書に掲載)をみるかぎりでは打製で扁平な刃先を成形したものである。剣という字のもつイメージとはまた異なる。
長さは約20cmとされ、人工遺物であることは間違いないが製作年代は確定していない模様である。
かつて考古学者の八幡一郎は、本石剣を東蒙古の石鍬に類似すると指摘した(八幡一郞「石鍬」『考古学雑誌』第31巻第3号 1941年)が、それ以降の本石剣の考古学的評価は情報収集不足につき不明である。
現在、石剣は石神町の自治会において保管されているとのことで、雨乞神社の現地からは移設されているが、文化財指定はされていない様子である。
さて、この石剣は雨乞神社の神体であり、祭祀の折に石剣が濡れてきたら雨が降るという超自然的存在だった。
雨乞山が存する石神町の「石神」はこの神体たる石剣に由来するという説が有力だが、石剣を安置した雨乞神社自体が巨岩の岩陰に鎮まることにも触れておきたい。
雨乞神社 |
岩穴状の空間に祠を安置する。古くはこの祠内に石剣をまつったということになる。 |
『渥美町史』歴史編上巻(渥美町 1991年)によれば雨乞神社は通称であり、正式には請雨社と呼ぶらしい。
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