三重県四日市市山之一色町
社殿手前の向かって左に「魔除石」の字が刻まれた岩石が置かれている。
裏側に刻銘があり、平成元年、地元の石材会社による奉納とある。
注連縄もかけられていて現代の岩石信仰と言って良いが、あまり類例を聞かないタイプの岩石である。
魔除けではなく縁切りの形であれば、安井金毘羅宮(京都市)の「縁切り・縁結び祈願石」が形状的には類似するが、そこから着想を得たのだろうか。
穴あき石の手前にはさらに平石も置かれている。供物台を意味しそうであるが、もし穴を潜る祭祀であれば供物をここに置くのは憚られる。
奉納者の石材会社は閉業している模様で、平成時代の岩石でありながら穴の意図や祭祀方法の詳細経緯の多くはすでに失われようとしている。
魔除石と言えば石敢當の信仰が著名だが、石敢當は避邪のために岩石を置くという心性なのに対し、本例は岩石に穴を開けていて、岩石を以て邪を通さないという信仰とは対極にある。
このように、岩石をどのようにするかで魔除けの考え方が多様となるのも興味深い。
むしろ胎内くぐりなどに通ずる禊祓の思想に立脚したのかもしれない。
ちょうど参拝時、社頭に茅の輪がつくられていた。当社で茅の輪くぐりの祭礼がいまだ盛んであるからこそ、その穴に寄せた岩石奉納だった可能性も記しておく。
遠保神社社殿と茅の輪 |
境内の山の神。近くから遷座したという。 |
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